「五分間…」
現在のしゅうがつぶやいた。
こたにが頷いた。
「あの時、時間にずれがあったの。あなたは三時十五分に告白して、私の返事を聞く前に去った。でも私の時計では、あなたが去ったのは三時二十分だった」
しんじが困惑した顔で言った。
「時間がずれるなんて、そんなこと…」
転校生の女の子が静かに説明を始めた。
「時間は絶対的なものではないの。強い感情や願い、特に後悔は時間に影響を与えることがある。あの日、二人の想いがあまりにも強すぎて、同じ瞬間を異なる時間軸で体験することになった」
「どういう意味だよ」
しゅうが震え声で問いかける。
「しゅうは告白した瞬間から、こたにの反応を見て拒絶されると思い込んだ。その恐れが時間を早めたの。だから実際には五分間あったこたにの思考時間を、ほぼゼロだと感じた」
こたにが悲しそうに続けた。
「私は逆に、あなたの告白があまりにも嬉しくて、時間が止まったように感じた。返事をしようと思っている間に、あなたにとっての時間は先に進んでしまった」
転校生の女の子の目が光った。
「そして、その時間のずれが二人に別々の現実を体験させた。しゅうにとって、こたにが困った顔をして拒絶しようとしているように見えた瞬間は、実際にはこたにが嬉しさで驚いている瞬間だった」
「でも、なんで今になって…」
しんじが口を挟む。
「時間の歪みは解決されずにいると、やがて現実に影響を与え始める」
転校生の女の子が厳粛に言った。
「今日教室で起きた五分間の停止は、あの日の五分間のずれが現在に現れたもの。このまま放置すれば、もっと大きな時間の混乱が起きる可能性があった」
しゅうは愕然とした。
「つまり、俺たちの勘違いが…」
「世界に影響を与えていたの」
こたにが頷いた。
「だから、真実を明らかにする必要があった。時間の歪みを修復するために」
転校生の女の子が付け加えた。
「そして、あなたたち三人がここにいるのは、しんじが唯一の目撃者だから。あの日、廊下であなたたちのやり取りを偶然見ていたでしょう?」
しんじの顔が青ざめた。
「確かに…俺はしゅうが慌てて走ってくるのを見た。でも、何があったのかは知らなくて…」
「あなたの記憶が、時間の歪みを証明する鍵だったの。第三者の証言があれば、どちらの時間軸が正しいかではなく、両方とも真実だったということを証明できる」
しゅうは理解し始めた。
「だから、課題があったのか。俺たちに真実を思い出させるために」
「そう。記憶を正確に辿り、感情に惑わされずに事実を見つめることで、時間の歪みの原因を特定できる。そして最も重要なのは…」
転校生の女の子が三人を見回した。
「両方の気持ちが本物だったと認めること」
しゅうはこたにを見つめた。
「じゃあ、本当は…」
「私はあなたと付き合いたかった」
こたにが涙を浮かべながら言った。
「『私もあなたが好き』って言おうとしたの。でも、あなたが逃げてしまった」
「俺も…俺もお前と付き合いたかった」
しゅうも涙を流した。
「でも、お前が困った顔をしたから、拒絶されたんだと思ったんだ」